L3 ネットワーク層（Network Layer）
異なるネットワーク間でのパケット転送
ネットワーク層とは
ネットワーク層（L3）は、異なるネットワーク間でパケットをルーティングする役割を担います。 IPアドレスを使用してエンドツーエンドの通信を実現し、 ルーターを経由して宛先ネットワークまでパケットを転送します。
L3パケット転送の流れ
送信元
192.168.1.10
ルーター1
ルーティング判断
ルーター2
ネクストホップ
宛先
10.0.0.5
ポイント: L3はエンドツーエンド（送信元IPと宛先IPは不変）、 L2はホップバイホップ（MACアドレスは各ルーターで書き換え）。
IPアドレス
IPv4
- • 32ビット（約43億アドレス）
- • 例: 192.168.1.1
- • NAT/PAT で延命中
- • プライベートIP: 10.x, 172.16-31.x, 192.168.x
IPv6
- • 128ビット（事実上無限）
- • 例: 2001:db8::1
- • NATが不要
- • オートコンフィグ（SLAAC）
ルーティングテーブル
ルーターはルーティングテーブルを参照して、パケットをどのインターフェースから出すかを決定します。
| 宛先ネットワーク | ネクストホップ | インターフェース | メトリック |
|---|---|---|---|
| 10.0.0.0/8 | 192.168.1.1 | eth0 | 10 |
| 172.16.0.0/12 | 192.168.1.2 | eth1 | 20 |
| 0.0.0.0/0 | 192.168.1.254 | eth0 | 1 |
ロンゲストマッチ: 最も具体的（プレフィックスが長い）なルートが優先される
主なルーティングプロトコル
スタティックルーティング
手動設定。小規模・固定的な構成向け。変更に弱い。
OSPF（Open Shortest Path First）
リンクステート型IGP。大規模LANで使用。エリア分割で効率化。
BGP（Border Gateway Protocol）
パスベクトル型EGP。インターネットのバックボーン。AS間ルーティング。
NAT（Network Address Translation）
プライベートIPアドレスをグローバルIPアドレスに変換。IPv4アドレス枯渇対策として普及。
SNAT（Source NAT）
内部→外部通信時に送信元IPを変換
DNAT（Destination NAT）
外部→内部通信時に宛先IPを変換
SRE/インフラ観点
監視項目
- • ルートテーブルサイズ: BGPフルルートは90万経路超
- • ルートフラップ: 経路の不安定な変動
- • ICMP応答時間: レイテンシ監視
クラウドでのL3
- • VPC: 仮想プライベートネットワーク
- • サブネット設計: AZ分散、パブリック/プライベート
- • ルートテーブル: サブネットごとに関連付け