トランザクション

ACID、分離レベル、ロック

ACID特性

A - Atomicity（原子性）

トランザクションは全て成功するか、全て失敗するか。中間状態なし。ロールバックで元の状態に戻る。

C - Consistency（一貫性）

トランザクション前後でデータの整合性が保たれる。制約違反があればロールバック。

I - Isolation（独立性）

並行トランザクションが互いに干渉しない。分離レベルで制御。

D - Durability（永続性）

コミット後のデータは永続化され、障害があっても失われない。 WALで保証。

トランザクション分離レベル

分離レベル	Dirty Read	Non-Repeatable	Phantom
READ UNCOMMITTED	発生	発生	発生
READ COMMITTED	防止	発生	発生
REPEATABLE READ	防止	防止	発生*
SERIALIZABLE	防止	防止	防止

Dirty Read

未コミットのデータを読んでしまう

Non-Repeatable Read

同じクエリで異なる結果が返る（他が更新）

Phantom Read

同じ条件で行数が変わる（他が挿入/削除）

*PostgreSQL: REPEATABLE READでもPhantomを防止（スナップショット分離）
*MySQL InnoDB: REPEATABLE READがデフォルト、ギャップロックでPhantomを軽減

ロック

共有ロック（S Lock）

読み取り用。複数トランザクションが同時に取得可能。書き込みはブロック。

排他ロック（X Lock）

書き込み用。他のすべてのロックをブロック。 1つのトランザクションのみ取得可能。

行ロック

特定の行のみロック。並行性が高い（InnoDB, PostgreSQL）

テーブルロック

テーブル全体をロック。DDL操作時など

ギャップロック（MySQL）

インデックスレコード間の隙間をロック。Phantom防止

デッドロック

複数のトランザクションが互いのロック解放を待つ状態。 DBMSが検出し、一方をロールバックして解消。

デッドロックの例

TX1

1. LOCK row A

2. LOCK row B ← 待機

TX2

1. LOCK row B

2. LOCK row A ← 待機

デッドロック対策

• ロック取得順序を統一（ID昇順など）
• トランザクションを短く保つ
• 適切なインデックスでロック範囲を限定
• リトライロジックの実装

実践的なSQL

1 -- トランザクション基本
2 BEGIN;
3 UPDATE accounts SET balance = balance - 100 WHERE id = 1;
4 UPDATE accounts SET balance = balance + 100 WHERE id = 2;
5 COMMIT;  -- または ROLLBACK;
6 
7 -- 分離レベル設定
8 SET TRANSACTION ISOLATION LEVEL READ COMMITTED;
9 SET TRANSACTION ISOLATION LEVEL SERIALIZABLE;
10 
11 -- 明示的ロック（PostgreSQL）
12 SELECT * FROM orders WHERE id = 1 FOR UPDATE;  -- 排他ロック
13 SELECT * FROM orders WHERE id = 1 FOR SHARE;   -- 共有ロック
14 SELECT * FROM orders WHERE id = 1 FOR UPDATE NOWAIT;  -- ロック待ちしない
15 SELECT * FROM orders WHERE id = 1 FOR UPDATE SKIP LOCKED;  -- ロック中はスキップ
16 
17 -- デッドロック確認（PostgreSQL）
18 SELECT * FROM pg_stat_activity WHERE wait_event_type = 'Lock';
19 
20 -- デッドロック確認（MySQL）
21 SHOW ENGINE INNODB STATUS;